横浜地方裁判所 昭和42年(わ)343号 判決 1968年4月08日
本瀬
横浜市南区大岡町字寺ノ下二、一三七番地
住居
右同
洋装生地販売業
上野尚義
大正一四年一〇月二一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について当裁判所は検察官園田幸男出席の上審理を遂げ次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月及び罰金六〇〇万円に処する。
但し本裁判確定の日より三年間右懲役刑の執行を猶予する。
右の罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は横浜市中区伊勢佐木町二丁目六一番地において洋装生地販売業しやるむ洋装店を、同町一丁目一九番地において洋装生地販売業イボンヌ洋装店をそれぞれ経営しているものであるが、所得税を免れようと企て、
第一、昭和三八年分の実際の課税総所得金額は一八、六五八、一〇〇円でこれに対する所得税額は八、八四二、八六〇円であつたのに売上げを除外する等の不正な方法により所得の一部を被匿したうえ、右しやるむ洋装店関係については、昭和三九年三月一六日、横浜市中区野毛町三丁目一一〇番地横浜中税務署において、同税務署長に対し、自己名義で右三八年分の所得金額が九六九、一〇〇円でこれに対する所得税額が九九、 〇九〇円である旨、また右イギンヌ洋装店関係については前同日、横浜市南区太田三丁目一二四番地横浜南税務署において、同税務署長に対し、姉上野芳子名義で右三八年分の所得金額が八〇〇、〇〇〇円でこれに対する所得税額が六七、八〇〇円である旨、それぞれ虚偽の分離した所得確定申告書を提出し、もつて右三八年分の真実の所得税額八、八四二、八六〇円と右申告税額との差額八、六七五、九七〇円の所得税を免れ、
第二、昭和三九年分の実際の課税総所得金額は二三、三八六、六〇〇円でこれに対する所得税額は一一、六二〇、八五〇円であつたのに、前同様不正な方法により所得の一部を被匿したうえ、右しやるむ洋装店関係については、昭和四〇年三月一五日、前記横浜中税務署において、同税務署長に対し、自己名義で右三九年分の所得金額が一、三一五、四〇〇円でこれに対する所得税額が一八八、三二〇円である旨、またイボンヌ洋装店関係については、同月一三日、右横浜中税務署において、同税務署長に対し、上野芳子名義で右三九年分の所得金額が一、二〇一、六九〇円でこれに対する所得税額が一四八、二五〇円である旨それぞれ虚偽の分離した所得税確定申告書を提出し、もつて右三九年分の真実所得税額一一、六二〇、八五〇円と右申告税額との差額一一、二八四、二八〇円の所得税を免れ、
第三、昭和四〇年分の実際の課税総所得金額は二一、七一七、六〇〇円でこれに対する所得税額は一〇、六六〇、三七〇円であつたのに、前同様不正な方法により所得の一部を被匿したうえ、右しやるむ洋装店関係については、昭和四一年三月一五日、前記横浜中税務署において、同税務署長に対し、自己名義で右四〇年分の所得金額が一、〇六九、九〇〇円でこれに対する所得税額が一八二、九七〇円である旨、また右イボンヌ洋装店関係については、前同日、右横浜中税務署において、同税務署長に対し、上野芳子名義で右四〇年分の所得金額が一、三五五、二六七円でこれに対する所得税額が一九七、六七〇円である旨、それぞれ虚偽の分離した所得税確定申告書を提出し、もつて右四〇年分の真実の所得税額一〇、六六〇、三七〇円と右申告税額との差額一〇、二七九、七三〇円の所得税を免れ
たものである。
(証拠の標目)
一、大蔵事務官松岡賢逸作成の告発書
一、松村善次郎作成の取引内容照会に対する回答書
一、鳥本知三作成のイボンヌ洋装店の期末在庫についての上申書
一、大蔵事務官作成の鳥本知三に対する昭和四一年一一月六日付質問てん末書
一、磯貝龍利作成の取引内容照会に対する回答書
一、中村文俊作成の取引内容照会に対する回答書
一、森本重雄作成の取引内容照会に対する回答書
一、山本準之助作成の取引内容照会に対する回答書
一、広瀬泰三作成の取引内容照会に対する回答書
一、北村友男作成の取引内容照会に対する回答書
一、三島文子作成の取引内容照会に対する回答書
一、上田秀男作成の取引内容照会に対する回答書
一、木全登誉和作成の取引内容照会に対する回答書
一、井上彦三郎作成の取引内容照会に対する回答書
一、奥井善之進作成の取引内容照会に対する回答書
一、北川善喜作成の取引内容照会に対する回答書
一、真柄輝雄作成の取引内容照会に対する回答書
一、伏屋喜平治作成の取引内容照会に対する回答書
一、小沢悦治作成の取引内容照会に対する回答書
一、藤田時夫作成の取引内容照会に対する回答書
一、遠藤武作成の取引内容照会に対する回答書
一、丸山増太郎作成の取引内容照会に対する回答書
一、持田竜男作成のイボンヌ洋装店昭和三八年度経費の内訳に関する上申書
一、神奈川県南県税事務所長作成の納税証明書三通
一、同県横浜県税事務所長作成の納税証明書三通
一、同県労働部長作成の失業保険料の納付状況等に関する回答書
一、横浜中社会保険事務所長作成の健康保険及び厚生年金保険料の納付状況等照会に対する回答書
一、北村幸枝作成の店舗賃貸証明書
一、大蔵事務官作成の鳥本知三に対する昭和四一年七月一九日付、同年一一月一日付、同四二年一月二八日付各質問てん末書
一、鳥本知三の検察官に対する供述調書
一、大蔵事務官作成の持田龍男に対する昭和四一年七月一九日付、同四二年一月一九日付各質問てん末書
一、持田龍男の検察官に対する供述調書
一、大蔵事務官作成の小林健二に対する昭和四一年七月一九日付質問てん末書
一、大蔵事務官作成の上野芳子に対する昭和四一年七月一九日付、同年八月一日付各質問てん末書
一、上野芳子の検察官に対する供述調書
一、大蔵事務官作成の牧野五郎に対する昭和四一年七月一九日付、同四二年一月二八日付各質問てん末書
一、大蔵事務官作成の上野尚義に対する昭和四一年七月一九日付、同年七月二二日付、同年一一月二四日付、同年一二月一日付、同年一二月七日付、同年一二月一三日付、同四二年一月一四日付、同年一月二一日付各質問てん末書
一、上野尚義作成の横浜南区中里町三九三番地の不動産にかかる固定資産税に就いての上申書
一、上野尚義の検察官に対する昭和四二年三月六日付、同年同月八日付各供述調書
一、押収してある各人別売上帳一冊、賃金台帳三冊、家賃領収書一綴、家賃領収書六冊、棚卸表二綴、電話領収書二枚、日計表等八一束、経費綴一二綴、経費綴六綴、給料計算書一袋、貸付信託決算収益計算書一綴、売上帳一冊、公正証書三袋、しやるむ分経費仕訳表一冊、同経費内訳表一冊、イボンヌ経費内訳表一冊、イボンヌ分昭和三八、九年分仕入帳二冊、しやるむ昭和三九年分出金伝票等一二綴、イボンヌ昭和三九年分領収書一二綴、しやるむ、イボンヌ昭和四〇年分領収書等一八綴、イボンヌ昭和三九年分経費仕訳表一綴、棚卸表一袋、請求複写簿五冊、しやるむ昭和三八、九年分仕入帳二冊納品書請求書綴五七綴、しやるむ昭和三八年分経費内訳表一綴、注文請求書等一綴、契約書等一綴、青色請告書綴一綴、(昭和四二年押第五四八号の一ないし二九)
(法令の適用)
判示第一、第二の各事実につき、昭和四〇年法律第三三号付則第三五条、同改正前の旧所得税法第六九条
判示第三の事実につき、 所得税法第二三八条第一項
併合罪の加重、合算につき、 刑法第四五条、第四七条、第一〇条、第四八条第二項
懲役刑の執行猶予につき、 同法第二五条第一項
罰金不完納の場合につき、 同法第一八条
(裁判官 鈴木照隆)